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日本のマスコミのあり方にあまり文句を言ってはいけないのでしょうが、なぜ経済学にマクロとミクロの違いがあるのかが充分説明されていないと思います。
経済学にはマクロ経済学とミクロ経済学がありますが、もしも一人ひとりにとって正しいことを足していけばマクロの結果になるのであれば、マクロ経済学はなくてもいい。
ミクロ経済学とその足し算だけでもいいはずです。
しかし、なぜマクロ経済学があるのか、なぜ総需要という考え方がそこに出てくるのかというと、それはMさんが指摘された通り、一人ひとりはよくても全員が同じことをやったら合成の誤謬が発生するからです。
合成の誤謬はミクロでは説明できない。
マクロでしか説明できないから、マクロ経済学があるはずです。
それなのに、今行われている議論はどうもミクロだけで解き明かそうとしています。
ミクロだけで解き明かそうとすると、どうしても出口がなくなってしまう。
というのは、合成の誤謬が起きているからです。
一人ひとりは貯金をしたい。
貯金をするのは自己責任であって、将来は人に迷惑をかけたくないという美徳がそのなかにある。
ところが美徳であるはずのその行動が、反対側でとんでもないことを引き起こしている。
それはマクロ的視点で見なければわかりパラダイムシフトについていえば、うまく言わないと非常に大きな誤解を生じてしまいます。
貯蓄は悪で、全部使わなければいけないのではないかと誤解する人が出てくる。
それは全然違います。
入ってきたものを全部使う必要はまったくない。
わずかでいいのです。
ません。
そういうことをもっと一般の人たちに知らしめていく必要があると思います。
Mさんもアメリカとの対比で指摘されていましたが、今年に入ってからのアメリカ経済は実際に今の日本のようなバランスシート不況へ向かっています。
グリーンスパンFRB議長は今年に入ってから三五○ベーシスポイントも金利を下げたのに、資金需要が増えない。
自動車販売も住宅販売も本来ならばもっと増えなければいけないのにそれが反応しない。
アメリカの企業が利益の最大化から財務内容の改善に経営の軸足を移してしまったからです。
そうなってくると、アメリカの人も、もしかしたら違うパラダイムがあるのではないか、違う世界があるのではないかと考えるようになるでしょう。
それで見回せば、実は日本はもう一○年前からそういう状況だった。
日本だけでなく台湾もタイも似たような状況になっている。
そうなってくると、学界のほうも、今我々が言おうとしているようなことに同調してくるのではないでしょうか。
あと二、三年先の話かもしれませんけれど。
今晩の食事の買い出しにスーパーマーケットに行き、例えば今まで千円札一枚でやっていたところを何とか九五○円にしようと努力しているのが現在の典型的な主婦です。
それで結局、消費が五%落ちるから、来年はみんなの所得がその分だけ減少してしまうわけです。
私が言っているのは、給料を全部使えというのではなくて、一○○○円を九五○円に切りつめる代わりに、何とかもう一品追加して一○五○円にならないかということです。
その程度の話なんです。
一○○○円が一○五○円というのはたいしたことはないかもしれませんが、この五%が今重要なのです。
そういう形で個人消費がすべて五%増えると、個人消費はGDPのなかの六割を占めますから、トータルでGDPは三%増えます。
今三%成長になれば、かなりの問題は短期的には解決します。
政府の経済見通しも当然クリアできます。
言ってみれば、一○○○からマイナス五○かプラス五○かという、わずかな差なのです。
それぐらいのことで解決可能なのだから、そういう運動をぜひ起こすべきだと思います。
結局、そこで問われているのは国民の団結力です。
ほかの人は一○五○円使ってほしいが、自分だけは九五○円にしようと一人でも思ってしまうと、これはうまくいきません。
みんなが信頼して、あなたが使えば私も使うということにならなければいけない。
それが国民の団結力ということです。
これは自分たちの問題ですから自分たちで解決するしかないわけですし、私は充分できると読んでいます。
このように言うと、そんなこと言われても欲しい物がないのに、消費は増やせないという反論が必ず聞かれます。
確かにそうかも知れません。
しかし、国民の一人ひとりが使わないとお金は回っていかないのです。
民間部門が貯蓄超過になれば政府が代わりに使うしかありません。
その政府に対し、「無駄遣いするな」と言ったところで問題は解決しません。
私にはまだまだ欲しい物、やりたいことがあり、決してお金の使い道がないとは思えませんが、たとえ欲しい物がなくとも我々が使わなければお金は回っていかないのです。
所得を受け取った人は、ある一定の割合を消費に回す義務があるのです。
国民が使わなければ、無駄と言われようが何と言われようが政府が国民に代わって使うほかないのです。
であるのであれば、いっそのこと自分で使ってしまった方が良いとは思われませんか。
この点について、八○年代に私がアメリカにいた時にアメリカ人から感心する話を一つ聞かご存じのようにニューヨークには靴磨きの人が駅や道端にたくさんいます。
私は、自分みたいな若造があんな高い台に座って人に靴を磨かせるなどとんでもないことだと、非常に抵抗感がありました。
その話をアメリカ人にしたら、彼はそれは間違っていると言って、こんな話をしました。
人から聞いた話ですが、Mさんは日本が大変な不況に陥った時に、ある金持ちの友達に言ったそうです。
「不況の時に金持ちがお金を使わなかったら貧乏人は死ぬしかないのではないか。
だからきみは家を買いなさい。
私は自動車を買った」と。
先ほどMさんが言われたニューヨークの話ではありませんが、日本でもMさんのようにマクロ的な発想を持った方はおられたのです。
まさに今そういう状況で、まさに一品だけでもGDPで三%になる。
三%あれば、企業の借金返済が終われば今我々が直面しているデフレギャップは埋まってしまうのです。
別に彼らは卑下してやっているわけではない。
誇りを持って靴磨きという職業をやっている。
それを人に磨かせるのはよくないとか、自分で磨くのが美徳だと言ってしまったら、彼らの職業はどうなるんですか。
ある一定以上の収入があれば、彼らに磨いてもらわなければいけない。
そうしないとお金が回っていきません」この話を聞いて、なるほどと思いました。
日本人にはなかなかそういう感覚がなくて、「何だ。
靴ぐらい自分で磨けよ」という話になりがちですが、そろそろ日本もそういう考え方を取り入れるべき時期に来ているのではないかという気がします。
クーさんもこの間、同じようなことをMさんの話でしておられましたね。
ただ、ここで注意しなければいけないのは、一品運動などで消費さえ喚起すればすべての問題が解決するわけではないということです。
長期的な貯蓄・投資のアンバランスを埋めるためにはそういう努力が必要だし、そうすることによって今の短期的な不況もかなりの程度緩和されるというのは事実です。
しかし、それだけで日本経済が中長期的に見て安定的な成長に戻るかというと、そんな保証は全然ないと思います。
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